「第5回こうべ燦々会」セミナーレポート
「六甲山開発をめぐる企業経営の歴史とこれから」
(―六甲山の魅力度評価と六甲山再生への提言―)

主催:こうべ燦々会 共催:NMO勉強会&ひょうごオンリーワン経営研究会
日時:平成29年11月15日(水)18:30〜20:30
場所:神戸市勤労会館403号
<プログラム>
  講師   中小企業診断士・新神戸中小企業診断士事務所 中島 和樹 氏
  (内容)
  T 六甲山開発の黎明期
  U 六甲山開発企業の創業物語
  V 神戸市の魅力度評価と六甲山の評価
  W 六甲山再生のための提言
「こうべ燦々会」第5回セミナーを迎えて

 一昨年7月に誕生した「こうべ燦々会」のセミナーは第5回を迎えることになり、今回は、地元神戸のシンボルである六甲山をテーマとして取り上げた。
 神戸は山と海の自然に恵まれた町であり、今年は神戸港開港150年の記念すべき年であるが、六甲山でも森林防災120周年を迎えた。また、観光行政においても、国の地方創生の一環として、行政と民間が連携する新しい取り組みがなされており、今回のテーマとしてふさわしい内容になった。

セミナーの要旨

 六甲山をテーマにするにあたって、本来であれば現地見学ツアーをするべきかと考えたが、今回はまずスライドで六甲山の歴史と現在の状況をご紹介した。
 六甲山は明治中頃まで禿山であったが、懸命の防災植林事業の努力のおかげで現在の緑あふれる自然を取り戻し、まず開港後に来日した外国人によってその魅力が発見された。そして、自然保護か開発利用かの論争が巻き起こるなかで、戦後の昭和年間にはたくさんの人が訪れる観光地になった。しかし、阪神淡路大震災後は入込客数が減少し、かつての賑わいはなくなってしまったが、その一方、徒歩による静かな登山ブームが続いている。
 今回のセミナーでは、このような時代背景をふまえ、これからの六甲山について、参加された皆様からたくさんのご意見・ご提言をいただいた。

参加者からいただいたご意見・ご提言

 参加された皆様からいただいたご意見・ご提言は、以下のとおりである。

@歩行者と自動車の分離について
 今回の参加者の多くは、神戸市と周辺都市に在住または住んだことがある方々で、歩いて山に登る立場からのご意見が多かった。最近の六甲山は自動車が増えて歩きにくくなったというご意見が複数の方から出されたが、六甲山全山縦走路でも、ドライブウェイを歩かねばならない区間が複数あり、ハイカーは危険を感じている。具体的な提言として、区間を定めて自家用車を閉め出し、歩行者が適宜公共交通機関を乗り継ぎながら楽しめる仕組み(周遊券や交通機関など)を作ってはどうかという意見が出された。

A登山者のためのハイキング道の再生
 最近は高齢ハイカーや高齢者を対象とする登山団体が増えているが、結果として、芦屋のロックガーデン、保久良神社〜風吹岩などの人気コースは平日休日を問わず多くのハイカーで込みあっている。その理由は、かつて人気のあった魅力的なハイキングコースの多くが、花崗岩の風化が進んだために、道が崩れたり、細くなって歩きにくくなったためで、中にはマンションなどの建設で、入口が塞がれているコースもある。これらを再整備すれば、入込客数はもっと増えるとのご提言だった。

B登山者のための宿泊施設の整備
 セミナーの中でも、六甲山の賑わいを取り戻すために入込客の滞在時間を増やす必要があり、そのためには宿泊施設の充実が大切であるとあるとお話したが、参加者からも、登山者のための宿泊施設の整備を求める意見があった。具体的には、摩耶山の中腹にある軍艦ホテルを活用するべきだとの提言が出された。そして、宿泊施設はサービスが大事であるとのご指摘もあった。

 続いて、「神戸DMO」の話題に関心が集まった。「DMO」とは、Destination Management/Marketing Organization の略で、国が、地方創生の一環として、「観光地経営」の視点に立った地域のかじ取り役として、関係者と協同しながら観光地域づくりを担う法人として「日本版※DMO」を2020年までに、全国で合計100組織を立ち上げようとするものである。
 神戸市でも、昨年8月より検討会が6回実施され、来年には(一財)神戸観光局が、「神戸DMO」として発足することになり、神戸市観光局や(一財)神戸国際観光コンベンション協会、Feel KOBE 観光推進協議会は廃止されて、これに統合される。
 今回のセミナーでは、「DMOは京都にはまだできていないが、立山・富山には既にあり、DMOはこれから大きくなる」「神戸市だけではダメで、芦屋市や西宮市と国を巻き込んで六甲山DMOを作る必要がある」等の意見が出された。

今後の取り組みについて

 今回のセミナーでは、皆様から多くのご意見やご提言をいただき、有意義なセミナーになりました。ご参加いただいた皆様に厚く御礼申し上げます。また、ここで提供していただいたご意見・ご提言は、この場で終わらせることなく、行政などに対して発信できる機会があればと考えています。
 次に、今回は観光地評価モデルにもよく使われている「多変量解析による評価と投資の意思決定」について詳しくご紹介する時間がありませんでしたが、最近では企業の経営診断や日常生活においても有用なツールとして普及しているので、次の機会にご紹介したいと思います。

(報告者:「こうべ燦々会」担当講師 中島 和樹)

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